齢五十にして♪天命を探す⁉︎

方丈記鴨長明,市古貞次校注,岩波文庫

 


「ゆく河の流れは絶えずして,」から紡ぎ出す本書を,高校生なら聞いたこと,習ったことがあるかもしれません.

 私も出会ったのは,たぶん高校生のころだと思います.

 数十年ぶりに手にして堪能いたしました.

 短い作品ですが,とても濃密で深く味わいをいただいたと感じられる作品です.

 


 作者は本名は「ながあきら」というそうです.

 本書では校注の市古氏の解説で,歴史的背景や長明が取り上げている短歌や書など,とてもわかりやすく説明されています.

 解説によると,長明さんは平安時代末期1155年頃,京都下賀茂社神職の家に生まれたそうです.幼少7歳頃には従五位と位の高い身分として過ごされたようですが,父母とも早くに亡くし,苦労の絶えない人生を送られたそうです.世の出来事を取り上げて,本書を叙述されたのは50代だそうです.

 長明さんは名の如く,その時代下では,60代前半まで生きた大変に長命な方ですが,その分,人生訓は思うところが多様にあったようです.

 どちらかというと,世の中を憂い,やや冷めた目線のようにも感じられる書のように感じられますが,50年間にどのような出来事があったかを記している,素敵な随筆だなあと思いました.

 平安時代の末期から鎌倉時代の初めといえば,さまざまな事件や自然の猛威があり,まさに時代の行く末を案じ,狂気乱舞したのではないでしょうか.

 そんな時代の絵巻を長明さんの眼や耳で得たことを歌や書の一節からなぞらえた一作です.

 現代社会と合わせ鏡のようで,大変読みごたえがあり,味わい深く作品です.

 私は人生の途上で惑い続けておりますが,もっと早く味わう機会があれば,しっかりと人生を歩めたかもしれません.

 ぜひ思春期そして青年期に戯れて見てはいかがでしょう♪