ショコラオランジェと紅茶を嗜む聖夜のひととき/思い出は心の中にそっと輝いて♪

Truman Capote,A Christmas Memory ,Penguin Books.(From Title”Tiffany’s Breakfast “)


今年のクリスマスは皆さまはどのようにお過ごしされる予定でしょうか.

わたしはゆっくりと本と音楽のある空間で佇みたいと思います♪

さて

私の好きな女優さんの一人はオードリー・ヘップバーンさん.その中でも「ティファニーで朝食を」は格別にときめきを感じ,ついオードリーさんに恋い焦がれてしまいます.

映画「ティファニーで朝食を」の物語の中心は熱い恋の駆け引きですから作者のトルーマン・カポーティもきっと,数多い恋を経験した作家さんかもと感じてしまいますが,原作では「ティファニー」の意味とそこで食べる「朝食を」味わうという隠喩を探す青春もののようです.

この「ティファニーで朝食を」の本にオムニバスとして含まれている,この素敵な作家さんの代表作と言って良いでしょう,クリスマスの思い出,A Christmas Memory を紹介します🎶

 きっとA Christmas Memoryを読まれると,

 明日明後日のクリスマスの過ごし方の捉え方がちょっぴり変わるかもしれません.


 私はこの作品に今から15年ほど前に出会いました.

 鎌倉駅から北鎌倉に抜ける一本道の坂の途中にある洋館,歐林洞は今はなき,洋菓子と紅茶,コーヒーの名店です.

 1階には洋菓子と飲み物を販売し,フロアの奥ではティータイムが味わえました.

 2階にはサロンがあり,時折りコンサートやイベントが開かれていて,そのサロンコンサートの幕間にはお茶を楽しむ時間.音楽のに酔いしれ,紅茶に引き込まれて時空を超えて,優雅ひと時を楽しむことができました.

 クリスマスの頃には朗読と室内楽のサロンコンサートがありました.

 私はフルートの師匠,飯島和久先生からの紹介で一時期,黒住さやか先生にご指導いただいておりました.黒住先生の演奏はとてもパッションに満ちたもので,終演後も甘美な余韻にひたれる大好きなひとときを与えてくれます!

 私は先生の演奏を楽しむために訪れたサロンコンサートでこの「クリスマスの思い出」に出会いました.なぜかその時の朗読,ナレーションは今も耳に残っているようで,冒頭の文節は今でも声に出して語り始められそうな心地よい余韻を与えていただきました♪

 その時にいただいたケーキ,紅茶の上品でとても心地よい香りや味わい,そして鎌倉帰りの定番となったショコラオランジェとダージリンティを楽しむ瞬間は,その幸せな目印を私の口唇から海馬へと明確に刻んでくれたようです♪

 

 さてこの物語は劇で言うと一幕で終わるほどの長さです.

 物語はクリスマスのために歳の離れた二人がフルーツケーキを作るという場面設定です.

 「フルーツケーキの季節が来たよ♪」が二人の合言葉!

 7歳のぼくと60歳あまりの従姉妹がクリスマスのフルーツケーキを三十個ほども作り,大統領から牧師や鋳掛屋さん,バスの運転手さんなど多くの方のために贈り物をするのです.そのためにいろいろなことをして費用を工面していきます.例えば森の中でブラックベリーを摘んだり,ジャムやゼリーを作ったりしてそれを売ったり,お祝いやお別れの会のためにお花を積んだりしてなんとかフルーツケーキの元手を得ていきます.その11月の終わりからクリスマスまでの時期を毎年の楽しみ,あるいは充実のひとときとして繰り返されていきます.

 二人の掛け合いは,愛というより友情や信頼や尊敬の言の葉のようです.

 二人の境遇を少しずつ示して進む文脈は,結論を急がせず,少しずつ雪解けを待つ気分を与えてくれます.

 二人を別つその時は,物語の進展とともにうすうす想像できるものではありますが,哀しみや納得のときを受け入れるのに,あわてずに急がない瞬間を愛しているように感じさせてくれるようです.

 少年だった僕の思い出を通して,お金ではなく人や時間といった本当に大切な贈りものを教えてくれる一編です.

 とても短い小説ですが,ゆっくりとした味わいのひとときとしてお読みいただくのが良いかもしれません.

 本書はノーベル文学賞候補の日本の有名な作家さんも翻訳しています.

 彼の翻訳は,とても表現豊かに二人の,特に少年の心象を紡ぎ出しています.

 翻訳をお読みになった方もぜひ原書に触れてトルーマンに寄り添って大切な時を堪能してみることをおすすめしたいと思います!

 翻訳を読まれる方は,ゆったりとした時間を作者とともに歩みながら,味わうことができるものと思います!

 今年の聖夜にぜひご紹介したい一冊です♪

 

私は素敵な洋菓子と温かいストレートティで,「ぼく」のようにちょっぴりウィスキーをたらしたものをいただきながら,あの時の歐林洞での感動の思い出を巡らせて,ふたたび本書をじっくりと味わいたいと思います🎄